カムループスの先住民寄宿学校で見つかった215人の子供の遺体に関して議論拡大
カムループスの先住民寄宿学校で見つかった215人の子供の遺体に関する、虐殺とも表現する人もいる事件で、元寄宿舎学校に通っていた先住民がトラウマなど精神的危機に陥らないかが心配されています。
1874年代から1996年までカナダでは先住民に対し「同化教育」というものを行っていました
最後の寄宿舎が終わったのは1996年です。まだ、30代の若者の中にも通った者もある最近の歴史です。
それはどんなものかというと・・・
カナダ発足後、ヨーローッパからの白人とインディアンの間で抗争が起こりました
そこで解決策として設置されたのが「インディアン居留地」です
先住民に居留地として一定の土地を与え、衣食住を政府が保証するというものです
先住民からすれば「最低限の生活は保証してやるからこれ以上白人のじゃますんなよ」という場所
カナダ政府は考えました
「インディアンにもまっとうな市民になって欲しい、カナダ市民の一員としてしっかりとした常識と教育を身に着けて欲しい!」
先住民が白人から与えられた居留地で暮らしていると、カナダの役人がやってきます
「子供達を健全なカナダ市民にするため、お子様達を預かります!これは皆様の為なのです!」
カソリック教会が主導し、カナダ各所先住民用の寄宿学校が設置され子供達は強制的に寄宿舎に送られる事に、
そして寄宿舎で白人の考える「まっとうなカナダ市民」になる為の教育が始まります
当時の白人が考える「まっとうなカナダ人」とは「キリスト教で英語を話す事」
寄宿学校ではインディアンの言葉は基本禁止
子供達が先住民の言葉を話すと罰が与えられ、徹底的な英語教育がなされました
寄宿舎に入る時には清潔にするため髪をきれいに切り揃えられたそうです
しかし、部族によっては「髪を切るのは人が死んだときだけ」というしきたりがありましたから、髪を切られたので誰かが死んだものだと思って泣き叫ぶ子供もいたようです
幼い時期に、部族の言葉は禁止、英語だけ
そして教育を終えて、家に帰ると。。
お父さんお母さんをはじめ、家族と言葉が通じないのです・・・・
コミュニケーションの道具でもっと多く使われるとのが「言葉」
文化にとって言葉が一番重要です、それを奪われた文化が衰退しないわけがありません
両親が恋しくて寄宿学校を逃げ出す子供も多かったのです
しかし、家族の過ごす村から寄宿学校は通常数百キロ離れているのが普通です
冒頭のアニメは12歳で寄宿学校を逃げ出した少年の実話に基づくストーリーです
1966年10月に寄宿学校を逃げ出し
自分の家まで600キロあるとは知らずに両親の元まで線路を歩き10月22日に飢えと疲労と寒さでのたれ死んでしまうストーリーです
今の40歳ぐらいの先住民の方は学校に行っていない人も多くいます
なぜならその両親達は父母から強制的に切り離されたつらい過去を持っていますから子供を隠して寄宿学校に行かせないようにします
そして先住民の教育レベルが益々下がります
現在でも大学の中退率は先住民が最も高いのです
居留地内に住む30代40代の方はほとんどが居留地の外に働きに出た経験があるそうです
しかし、その多くがカナダの社会に馴染めず居留地に戻ってくるようです
また、居留地に戻らない者は社会にも馴染めず、居留地でのあてのない生活にも嫌気がさし、ホームレスになる先住民も多いようです
バンクーバーなどの大都市のホームレスに先住民が多いのにはこんな理由があります
インディアンの先天的な能力自体が劣っているのではなく様々な問題が先住民をそうさせているのは明白です
居留地に戻ってきても仕事はありません、「人間は社会的」な動物です社会的無価値では精神も病みます
現在居留地で最大の問題は「アルコール依存症」と「自殺」です
記者である私はカナダで日系一世です
子供達にはせめて日本語をしっかり受け継いでほしいと家庭内では日本語を徹底しています
おかげで私の子供達は話すだけではなく日本語の読み書きにも不自由しないようになってきました
もし、カナダ政府が「あなたの子供はカナダで生まれたカナダ人なのだからまっとうなカナダ人に育つように6歳から9年間預かります」
と通達を受けたらおそらく私は日本に帰るでしょう
しかし、先住民にはその選択はありませんでした
カナダ政府は2008年同化教育に対し正式に謝罪
当時のハーパー首相は、先住民の文化や信仰が白人よりも劣っているものだという想定で子どもたちや家族を伝統・文化の影響から切り離し支配的な西洋の文化に同化させようとした政府の方針は間違っていたと認めました
カナダ政府は、今日までに44億カナダドル(約4,400億円)を補償金として支払っています
しかしながら、今回の事件で再発した、先住民に対する「ホワイト・カナダ」が用意した社会との摩擦を解決するにはにまだまだ時間がかかりそうです
これらの出来事はオーストラリアなどでも起こっています。