誤って切ったら罰金500万円!?「ホワイト・バーク・パイン」のお話
2017年レイクルイーズ・スキー場はカナダ環境省に日本にして約2億円の罰金が請求されました。その理由は・・・
レイクルイーズ・スキー場は国立公園から土地をレンタルして営業しています。そのためスキー場内の自然保護も任されています。ところがコース整備の際に特別に保護されてる希少な木「ホワイト・バーク・パイン」を39本も切り取ってしまったのです!
環境省の処分は厳しいもので一本につき日本円にして500万円、合計約2億円の罰金が言い渡されました。カナダの環境問題に対する厳しさがよく表れている事件となりました。
ホワイト・バーク・パインは日光を好むため、ロッキーでは標高2千メートル付近、森林限界線すぐ下の非常に厳しい環境に生息します。高所は冬季は雪と厳しい寒さに晒され乾燥し、水分も少なく土は薄くほんのわずか、岩だらけでほとんど栄養をとる事が出来ません。
成長が非常に遅く、松ぼっくりの生産を開始するのに25〜30年かかります。そして松ぼっくりが成熟するのに2年かかります。種子が出来る期間は樹齢60年〜80年から、さらに数百年続きます。そして1000年以上生息します。
ホワイト・バーク・パインは日本では盆栽に使われる「五葉松」の種類です。高さ12〜18 m、まれに直径1.5 mまで成長する可能性があります。その名の通り上向きに5つ針葉を持ちます。
ホワイト・バーク・パインは、繁殖のためにナッツ・クラッカーと呼ばれる鳥に大きく依存しています。ナッツ・クラッカーは、成熟した松ぼっくり種を餌とします。
種子は丸みを帯びて他の松の種子よりも大きいです。鳥は舌の下の袋に種を入れて運び、時には最大10kmも離れた浅い餌の貯蔵庫に種を保存します。
ナッツ・クラッカーは、時に最大9万個以上の種子を貯蔵します。ナッツ・クラッカーは貯蔵場所を忘れてしまう事があり、その種子がしばしば芽を出します。
このようにナッツ・クラッカーがホワイト・バーク・パインの繁殖に大きな役割を果たしているのです。
鳥以外にも、多くの動物がこの木の高カロリーで栄養価の高い種子を食べています。種子は脂肪52%、タンパク質21%、銅、亜鉛、鉄、マンガン、カルシウムなどのミネラルが含まれています。
1年中冬眠しない赤リスはこの栄養豊富な種子を食料として収集して貯蔵します。またリスが貯蔵した種子をグリズリーが横取りする事も多々あります。グリズリーの繁殖力は、ホワイト・バーク・パインの繁殖地の広さに大きく関係しています。
ホワイトバークパインは地球温暖化で急増したマツクイムシなどの害虫や菌による病気で急激に減少しています。その結果、2011年から絶滅危惧種法に基づく上場候補となっています。
他の生物と大きく相互関係にある植物は特に保護されています。環境省のレイクルイーズ・スキー場に対する処置は厳しいものでしたが、環境保全の意識は大きく高まったと言えるでしょう。
TEXT by KJ